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前川喜平さん

(現代教育行政研究会代表、元文科省事務次官)

 幼保無償化制度からの外国人幼稚園除外はあってはならない差別だ。朝鮮学校に関して言えば高校無償化で文科省官僚として制度に携わり、朝鮮高校が除外されたことで当事者としてとても残念な思いをした。今回、朝鮮幼稚園が除外されたことについてもまったく同じ思いだ。

 今回の外国人学校幼稚園除外は憲法14条で定められている「法の下の平等」に明確に反している。教育の機会均等について記されている教育基本法第4条では「人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」と明記されているし、子どもの権利条約ではそれぞれの民族性の保持、その民族性に基づく教育を行う権利を認めている。憲法や教育基本法、国際人権法に照らし合わせても、不当な差別であることは明らかだ。

 朝鮮学校だけが露骨に除外された高校無償化制度とは違い、幼保無償化制度からはほかの外国人学校幼稚園も制度の対象外とされた。教育とはまったく関係のない政府の対北朝鮮敵視政策に基づいた「朝鮮学校はずし」ありきの制度である一方、明治時代から続く日本の民族差別的、排外主義的な姿勢が如実に現われた問題とも言える。

 現在、日本では外国人が増えていく一方、右派的な思想を持つ人々によるヘイトスピーチやヘイトクライムなどが深刻化している。かれらの思想の根底にはエスノセントリズム(自民族中心主義)がある。日本を「単一民族国家」などと公然の場でうそぶき、外国人に対する差別・偏見政策を平気で行うような「ヘイト体質」の現政権下でそのような思想がますます増幅されていることに危機感を覚える。

 排外主義を克服し、日本が多文化・多民族共生社会へ舵を切るためには教育の力が必要だ。

 道徳教育や歴史修正主義的な教科書を見直すことはもとより、日本の学校の子どもたちと民族学校の子どもたちが活発に交流し、それぞれの違い、異なった文化を尊重しあうメンタリティーを幼いころから教育の場で養うことが重要だ。70年以上の歴史があり、これまでも日本の学校とさまざまな形で交流を行ってきた朝鮮学校はそのモデル、先駆者として、日本が豊かな共生社会を築いていくうえで非常に重要な役割を担っていると思う。

 在日コリアンの方々にとっては高校無償化、幼保無償化からの除外と長く苦しい状況が続いている。しかし近い将来に現政権が交代し、日朝国交正常化や南北朝鮮の統一がなされれば、在日コリアンを取り巻く状況は確実に好転すると確信している。

 「未来は今よりもいい社会になっている」とは私の信条だが、その未来が訪れるまで粘り強く運動を展開していくことが大事ではないか。現在行っている地道な署名運動や議員への要請活動が必ず実を結ぶときがくる。今できることは朝鮮学校への理解者、協力者を増やしていくこと。私も朝鮮学校の存在をより広め、民族教育の制度がしっかりと保障されるよう尽力したい。

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